記録 No.007 / 資料
燃料コックのパッキン交換 ── 250SS / ねじ込み式
ON と RES が「吸う高さ」だけの違いだという構造の話から、パッキンの並べ方、締め加減、漏れチェックまで。ガレージで印刷して使える形にした。
2026-09-08
250SSの燃料コックを新品に替えるにあたって、パッキン交換の手順をまとめた。
⚠ 最初に ── ガソリンの扱い
- 屋外、または十分に換気できる場所で作業する。ガソリンの蒸気は空気より重く、床に溜まる
- 火気厳禁。近くでグラインダー・溶接・喫煙をしない
- 静電気でも引火する。ポリ袋やプラ容器の上で作業しない。受けは金属製の皿を使う
- 消火器を手の届くところに置く。これだけは面倒がらない
- ガソリンが染みたウエスは丸めて放置しない。広げて屋外で乾かす
- 目に入ると危険。手も荒れる。ニトリル手袋と保護メガネを使う
01|このコックの構造
| 部位 | 役割 |
|---|---|
| ネジ部+六角ナット | タンクにねじ込んで固定する |
| 長い真鍮パイプ | ON側の吸口。上端から吸うので、パイプの高さぶんが残る |
| パイプの根元 | RES(リザーブ)側の吸口。底から吸う |
| 黒いストレーナー | パイプに被せる網。タンクの錆・ゴミを止める |
| レバー+プレート | プラスビス2本で留まる |
| バルブパッキン | レバーの裏にある円盤状のゴム。ここが本命 |
| 皿バネ/スプリング | パッキンを押しつけて密着させる |
なぜ ON より RES のほうが下から吸うのか
長いパイプの上端から吸う ON では、パイプの高さより下の燃料は吸えない。 その「吸い残し」が予備タンク(リザーブ)になる。 タンクを分けているわけではなく、吸う高さを変えているだけ。
02|どのパッキンがどこに入るか
推測で組まない。 パッキンは外径・内径・厚みが少しずつ違うだけで、見た目は似ている。 外した物と新品を紙の上に並べて、1対1で対応させてから組む。これをやらないと、組んでから漏れて全部やり直しになる。
| 形 | 入る場所(一般的な例) |
|---|---|
| 一番大きい平リング | タンク取付部。本体フランジとタンクの間 |
| 中くらいの平リング | ストレーナー座面、またはカップ(沈殿カップ付きの場合) |
| Oリング(太いほう) | ネジ部のシール |
| Oリング(細いほう) | レバー軸まわり |
古いほうが潰れて薄くなっていることがある。迷ったら外径と内径を定規で測る。
03|用意するもの
| プラスドライバー #2 | サイズが合うもの。なめると詰む |
| スパナ/メガネレンチ | ナットのサイズは現物を測る |
| パーツクリーナー・ウエス | 多めに |
| 金属の受け皿 | オイル受け |
| 燃料ホース+ホースバンド | いっしょに交換 |
| ニトリル手袋・保護メガネ | |
| 金属の携行缶 | 抜いたガソリン用 |
| 新品のパッキンセット・ストレーナー |
04|手順
1 燃料を抜く
- コックを OFF にする
- キャブ側のホースを抜いて、金属の受け皿に流す
- タンクを空にするのが一番安全。 残っていると、コックを抜いたとたんに全部出てくる
- 抜いたガソリンは金属の携行缶へ。ペットボトルは使わない(静電気・溶ける)
2 コックをタンクから外す
- ホースを2本とも抜く。固くなっていたらカッターで裂いて外す(無理に引っぱらない)
- 六角ナットをゆるめる。本体を手で押さえて、ナットだけを回す。 本体ごと回すとタンク側のネジ山を痛める
- まっすぐ引き抜く。ストレーナー(網)を引っかけて折らない
- 抜いたらタンクの中をのぞく。 サビやドロが出ていないか確認
3 レバー側を分解する
- 分解する前にスマホで写真を撮る。 レバーの向き、ON と RES の位置
- プラスビス2本を外す。押しながら回す(力の8割は「押す」、2割で「回す」)
- ビス2本 → レバープレート → バネ(皿バネ)→ バルブパッキン → 本体、の順に出てくる
- 出てきた順のまま、紙の上に一列に並べる。 向き(表裏)もそのまま
4 そうじする
- パーツクリーナーで、通り道とパッキンが当たる面を洗う
- 当たる面にキズや段差がないか、指でなでて確認。 ここが荒れていると、新品でも漏れる
- 真鍮パイプの中が詰まっていないか確認。針金は通さない(中に傷がつく)
- ストレーナーは、破れ・目詰まりがあれば交換
5 新しいパッキンを組む
- 向きに注意。 片面に溝があるパッキンは、溝のある側が通り道のほう
- グリスは基本つけない。 つけるなら「燃料用ラバーグリス」を薄く。ふつうのシリコングリスはガソリンでふくらむことがある
- ゴムに液体ガスケットは使わない。 はみ出して通り道をふさぐ
- ビスは対角に少しずつ締める。締めすぎるとパッキンが潰れて、逆に漏れる
- 締めたらレバーを何回か動かして、渋くないか確認する
6 タンクに戻す
- タンク側のパッキンも新品にする
- かならず手で回しはじめる。 まっすぐ入るのを確かめてから工具を使う。斜め入りでタンク側のネジ山を壊すのが、この作業で一番多い失敗
- 締めるのは「漏れないぎりぎり」。ナットが当たってから 1/4〜1/2回転が目安
- 古いタンクはネジ座が痩せている。力任せに締めない
7 漏れチェック ── ここが一番大事
- コックを OFF のまま、少しだけガソリンを入れる
- 5分おいて、白いウエスでコックのまわりを拭って確認する(白いと、にじみが見える)
- ON にして、ホースの先からちゃんと流れるか。レバーのまわりからにじまないか
- RES でも同じ確認をする
- だいじょうぶなら、ホースをつないで、走る前にもう一度見る
⚠ 「そのうち止まる」で放置しない
- ガソリン漏れは火事に直結する。エンジンは熱く、マフラーはもっと熱い
- 少しでもにじむなら、もう一度外して、パッキンと当たり面を見直す
よくある失敗
| 失敗 | 何が起きるか | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| パッキンの位置を取り違える | 漏れる/レバーが動かない | 外した物と新品を並べて照合 |
| 締めすぎ | パッキンが潰れて逆に漏れる。ネジ山を壊す | 漏れない最小限で止める |
| ネジの斜め入り | タンク側のネジ山が終わる(タンク交換級) | 必ず手で回し始める |
| プラスビスをなめる | 二度と分解できない | サイズの合ったドライバーで、押しながら回す |
| 座面の傷を見落とす | 新品パッキンでも漏れる | 清掃時に指で撫でて確認 |
| 硬化したホースを再使用 | 走行中に抜けて全量漏れる | ホースとバンドも同時交換 |
250SS ならではの注意
- タンクを降ろすなら、オイルタンクとオイルホースを引っ掛けない。 2ストの分離給油系はコックとは別系統だが、車体上で近くにある
- 旧車のタンクは内部に錆とスラッジがあることが多い。 コックを抜いたときに中を覗いて、錆が出ているようならコックだけ直しても再発する。錆取りとコーティングまで視野に入れる
- 心配ならインラインの燃料フィルターをキャブ手前に追加する。キャブを開ける回数が目に見えて減る
印刷用
絵で説明した版も作った。ガレージで印刷して、手順どおりに進められる形にしてある。